3つのコントロールで組織をマネジメントする
2020.07.22
椿坂 泰志
こんにちは。キオミル株式会社の椿坂です。
私は会社員時代、とあるWeb制作会社で部長職を勤めていました。部長を経験する過程でマネジメント系の書籍を読み漁り、あるとき、若林計志氏の著書「MBA流 チームが勝手に結果を出す仕組み」に出会いました。
この書籍では「3つのコントロール」を軸にしたマネジメント手法が書かれています。書籍内で「3つのコントロールはマネジャーの武器」として紹介されていますが、言い換えると「マネジメントの型」として捉えることができます。
マネジメントのノウハウはマインド系や抽象系に行き着くことが多いのですが、この書籍で紹介されている 「3つのコントロール」は非常に実践的で、すぐ現場で活かせるノウハウも沢山書かれています。
今回の記事では「どうやってチームや組織をマネジメントすればいいの?」とお悩みの方に向けて、私が学んだ「3つのコントロールで組織をマネジメントする方法」をシェアしたいと思います。
コントロールの話の前に、そもそもマネジャーの役割は何なのか?という点を見直します。組織の中には沢山の人がいて、それぞれ役割分担があります。
マネジャーは経営陣と現場の狭間に位置します。両者の間にいるマネジャーの役割は戦略を実行レベルに落とすことです。経営陣はいつも理想や格好の良いことを言います。「売り上げ20%アップ。」「新しい世界を創造する。」。大抵は抽象的です。この抽象的なメッセージを具体的な実行出来るレベルまで落とし込み、トップと現場との通訳者となることがマネジャーの役割です。
経営陣が掲げた目標をそのまま現場に受け流すだけではマネジャーの価値がありません。以下の表のようにトップのメッセージを汲み取り、具体的な施策レベルまで現場に落とし込む必要があります。例えば、経営陣から挙がってくる「売上30%増」に対するマネージャーの通訳を見てみましょう。
例)
「売り上げを30%増やすには新規顧客を平均月10件増やさなければならない。また、これまで納品までにかかっていた期間を1ヶ月縮めて生産性を高めなければばならない。」
「新規顧客の獲得のためにはWebサイトのリニューアルが必要だ。また、生産性を高めるには各種業務のマニュアル化、自動化システムが必要だ。」
現場の動き
Web制作会社の選定、業務マニュアルの作成、自動化システム構築のベンダー選定
例)
「今期は売り上げを30%増やす。どうすれば良いかは各自で考えてほしい」
現場の動き
なにすればいいの…?
上の例を見ると、「マネージャーA」のほうが現場の行動が明らかになっているのわかります。一方で「マネージャーB」は経営陣の方針を現場に伝達しているだけで、行動が明らかになっていません。
このケースは必ずしも悪いとは言えませんが、中間管理職としては機能しているとは言い難いでしょう。(例えばマネジャーがいないトップと現場直結型組織の場合、「売上30%増。やり方は任せる」というマネジメントはあり得ます。)
経営陣のメッセージを具体化して現場に伝えるためには、3つのコントロールが活きます。さっそく3つのコントロールについて説明していきます。
コントロールは3種類あります。
以下、それぞれ概要を紹介していきます。
最も直接的なコントロールです。誰がやっても同じ結果が出せるように「行動」を管理する仕組みを作ることです。具体的には行動マニュアルの作成と実施、各種ドキュメントのフォーマットの作成などです。これらの目的は正確性と効率性の追求となります。
行動コントロールと異なり、具体的な方法は各個人に委任し、最終的な成果(結果)を設定するコントロールです。ある程度個人の力量に任せる部分があるため、成果報酬系のビジネスなど、成果に応じて報酬を得たい人のマネジメントには向いています。反面、各プロフェッショナルが責任を負う範囲も大きいので厳しい世界であり、組織がバラバラになりやすいという弱点もあります。
環境コントロールは組織の文化を創る根本的な要素をコントロールすることです。経営理念や規律、評価基準や報酬のシステムなど、組織の雰囲気を作りだす要素や採用、トレーニング、配置など「人」そのものに関わる事項です。
3つのコントロールはバランスが重要です。例えば、結果コントロールを強くしすぎると、自らで考えることが出来ない指示待ち人間になってしまう恐れがあります。
結果コントロールを強めれば、個々の裁量に任せる部分が多くなるため、成果を出せる人間が出てきますが、一方で成果を出せない人間も出てきてしまう恐れがあります。
環境コントロールはスタッフのやる気を高めてくれますが、やる気が高くてもやり方がわかっていなければ空回りするだけになってしまいます。
このようにマネジャーは3つのコントロールが持つ特長を理解し、現場に合わせて最適な分量にブレンディングして行く必要があります。
それでは3つのコントロールについて、詳しく説明していきます。
行動コントロールは最も直接的なコントロールでやってほしいことを極めて具体的に指示し、それに沿って動いてもらうことで、望ましいゴールへと導きます。
行動コントロールはコンビニやファストフードをはじめ、アルバイトが多くを占めるフランチャイズ店などで多く利用されています。なぜならプロでも素人でもやる気があってもなくても、マニュアルに従えば、思い通りの結果が出せるようなるからです。
例えば、マクドナルドは世界中で店舗を運営していますが、どの店にいっても同じ味のハンバーガーやドリンクが提供出来るのはマニュアルがしっかりしているからに他なりません。鉄板の温度やパテやバンズをどのくらいの時間で調理するかきっちり決まっています。また、アップセルやクロスセルをかける際のトークスクリプトも徹底してマニュアル化されています。
たとえば、業務マニュアルがある場合、スタッフは悩むことなくなります。マニュアルという正解を知っているため、自信を持って行動出来るようになります。つまり、まだ十分な戦力になっていない人物でも比較的容易に成功体験ができるため、自信を植え付けることができます。
複数人がマニュアル通りに業務をこなせば、絶妙なタイミングでゴールまで進行することが出来ます。例えるならばゴール前に走り込んだ絶妙なタイミングでパスが回ってきて、あとはシュートを打てば良い状態になるよう仕組み化されています。複数の行動をコントロールすることはある程度のチームワークを維持することに繋がります。
仕事によっては、1度のミスで人の命を奪ったり、甚大な被害をもたらすものがあります。当然、そのようなミスは経営にとってクリティカルになりかねません。そのような業務は厳密に行動をコントロールすることで未然に防ぐことができます。
現場や業務内容によっては、マニュアルを用いることで経験値の少ない人材であっても、即戦力にすることができます。場合によっては、正社員を雇う必要も無くなり、人件費の安いアルバイトやパートなどの非正規社員で業務を回すことができるようになります。
行動コントロールが機能すれば、自分のやるべき仕事が明確になります。無駄なことに悩む必要がないので、より付加価値の高い仕事に時間を注いだり、集中することができます。
行動コントロールの基本はマニュアル化することですので、「マニュアルに無いから出来ません」「指示されていないからやっていません」というスタッフが出てきています。
いわゆるお役所仕事しかできないスタッフが増えてきてしまいます。ハンバーガーショップで10個のハンバーガーを1人で買いにきた客に対して「こちらでお召し上がりますか?」と聞いたという有名話がありますが、行動コントロールを強めすぎると社内のスタッフがこのような状態になってしまいかねません。
ルールを守ることを目的とするのではなく、本来の目的や役割があり、そのためのマニュアルという点を忘れないようにする必要があります。2.部分最適化が起こる
役割を明確にし、ルールを決めると、スタッフが自分の与えられた業務の範疇を超えようとしなくなります。つまり「自分に与えられた業務はコレ。他は知りません。」という状態になることです。
これも行動コントロールを強めすぎた弊害です。「今日は10件まわりました」「50件電話しました」といったことをスタッフが口にし始めた場合は、黄色信号です。
思考能力の低下と同じく、本来の目的を見失っている状態ですので、この辺りは後述する結果コントロールをうまくブレンディングしていく必要があるでしょう。
行動コントロールを強めると、多数の決裁プロセスが必要になったり、確認フェーズが増えてしまうケースがあります。規則ばかりが増えることで逆に時間がかかってしまい、コストが生じてしまっては元も子もありません。本当にマニュアル化すべき箇所を見失わないよう注意が必要です。
行動コントロールによる効率の追求は、常にスタッフをロボットのように扱ってしまうリスクが隠れています。
業務を標準化するということは、みんなが同じことをできる状態を作りだすことです。つまり、標準化された業務以外に付加価値を生み出す業務がなくなってしまえば、クリエイティブを求めるスタッフは必然的に離れて行ってしまいます。クリエイティブな業種は属人的な業務と標準化すべき業務の見極めが必要でしょう。
行動コントロールに関してマネジャーのやるべき大きな仕事は標準化作業手順を作ることです。標準化作業手順を作ることでサービスの品質を標準化することができます。具体的には毎日同じようにやっている作業が無いかを検証し、それらを標準化出来ないか検討します。
例えば、Web制作の現場で言えば、毎回調べながら行っている検証環境の構築手順をマニュアル化する。毎回顧客に送付しているメールをテンプレ化しておく。など、標準化すべき業務が案外出てきます。
ただし、前述の通り、行動コントロールにはデメリットもありますので、他の2つのコントロールをうまくブレンディングする必要があります。
行動コントロールは業務の標準化を行います。なんとなくお気づきの方もいらっしゃると思いますが、行動コントロールできる業務は極端に言えば、誰が行ってもある程度得られる結果が予測できます。そのため、最終的には自動化したりアウトソーシングすることもできます。(もちろん責任を負う業務であったり大きな仕事の1つのプロセスがマニュアル化出来るといったものも沢山あります。)
一定間隔で行っているルーティン業務がある場合、かなりの確立で自動化できます。初期投資コストが生じる場合もありますが、うまく自動化できるれば、投資コストを回収することもできるでしょう。
行動コントロールで制御する業務の中では、誰がやっても結果が同じで、自分たちがやっても付加価値を生まない仕事が沢山含まれているはずです。このような業務はアウトソーシングが可能です。
検討のポイントは自分たちの時給よりも安くやってもらえるかです。また、この考え方は社内でも同じです。生産性が高く、時給の高い従業員は付加価値の高い仕事を行うように業務を割り振ります。逆に誰がやっても結果が同じような業務は生産性が低く、時給の安い経験の浅いスタッフやアルバイトの方などに任せるのが無難な考え方です。
話が少し逸れましたが、業務を外に出す前に、「何が自分たちに取って重要な業務なのか」「どの業務は社内で経験を蓄積する必要があるのか」についてよく検討する必要があります。
例えば、自社のコアとなる業務を外注することは競争力を弱めるリスクが生じます。私たちで言えば、プランニング業務がコアの一つとして考えられます。Web制作のプロジェクトは大抵はプランニングの良し悪しで成否が決まります。このような重要な業務をアウトソーシングしてしまっては、いつまで経ってもプロジェクトを成功させるノウハウが蓄積しません。
この点はアップルやキーエンスといったファブレス型のメーカーのさじ加減がうまい印象です。ファブレス型のメーカーは自社工場は持たずに企画や研究、マーケティングなどを自社で担当し、設備投資や人件費が必要な生産や管理部門は専門業者にアウトソーシングしています。
ここまで業務プロセスの自動化や標準化を目指す話が中心でしたが、行動コントロールは大きな業務プロセスでみるだけでなく、個々のスタッフとの対話やマネジメント、コーチングでも活きてきます。
たとえば、Web制作の現場で言えば、顧客からデザインに対して「目立つようにしてほしい」といった抽象的な依頼がよくあります。このような顧客からの依頼に対して、熟練のデザイナーには「明るくしてみてほしい」と得られる結果でコントロール(結果コントロールは次章)してみるのも良いでしょう。
一方で未熟なスタッフや状況によっては「#******にしてみてほしい(カラーコード)」と行動レベルまで制御して依頼する場合もあるでしょう。
このように行動コントロールのさじ加減や考え方は業務プロセスだけでなく、日々のちょっとした業務の中で活きてきます。
結果コントロールとは最終的な達成目標を明確にし、それまでのプロセスに関しては、各スタッフに委任する方法です。この狙いとしては、移り変わりの早い世の中でいち早く顧客のニーズに応えたり、業務プロセスを最適化させるためです。いちいち上司にお伺いを立てているようでは遅く、現場にある程度権限や裁量を与えることでスピード感のあるビジネスを実現することが出来ます。
結果コントロールでは仕事に対して自由度が与えられ、自分の行動に対して自分で責任を持つことになります。「上に言われたから仕方が無い」という空気が漂う職場ではなく、それぞれが経営者のように立ち振る舞います。各スタッフは自分の裁量や判断がダイレクトに反映されるため、仕事に対する当事者意識が芽生えやすくなります。
具体的な行動を催促しない分、スタッフには工夫をして仕事をする自由度が与えられます。つまり、場合によってはこれまでになかった画期的なアイデアなどが生まれる可能性も出てきます。
とはいえ、イノベーションは早々うまくいきません。さらに結果コントロールは行動コントロールと異なり、進捗プロセスが見えづらい側面があります。利益になるか分からない活動を見守るマネジャーにも相当な忍耐が求められます。そして耐えられない未熟なマネジャーはすぐに行動コントロールしてしまいます。
この点グーグルなどは仕事時間の20%を自分の担当業務以外に使う「20%ルール」が著名です。これは時間管理という「行動コントロール」でイノベーションという結果コントロール的な活動を試みる非常にバランスの良い取り組みと言えます。
頑張って取り組もうが評価が同じであれば多くの人は楽な方に流れやすいでしょう。しかし、結果コントロールでは自分の運命は自分で握っているような感覚になるため、比較的モチベーションが上がりやすいと言えます。
特にフルコミッション系の営業などは自分なりの方法で個人で何億も稼ぐことができるので、やる気のある人はどんどん働きます。しかし、これは全員に言えることではなく、厳しいノルマを課せられれば、人によっては逆にやる気が削がれてしまう恐れがあります。
スタッフが自律的に働き、自分のやり方を考えるので、行動コントロールのようなマニュアル作成の手間が省かれるのでコストは安いと言えます。
結果コントロールのデメリットはほぼメリットの裏返しになっています。
当たり前ですが、各スタッフに任せる領域を増やせば、失敗リスクも高まります。以前私が勤めていた職場であった出来事を紹介します。
とあるプロジェクトでそれなりに経験を積んだディレクターが制作進行を独断で停止させて3週間スケジュールが遅れるという自体が発生しました。このプロジェクトは会社の代表と問題のスタッフの二人で進行していましたが、代表がこのスタッフにプロジェクトを全委任していたため、問題の発見が遅れました。
これは上長である代表が細かいプロセスの管理を行っていない故に起きた問題とも言えます。(代表は多忙なので分からなくもありませんが…)
一つ言えることは結果コントロールと「放置」は異なるという事です。例えば、定期的な報告義務を設けるという行動コントロールをうまくミックスしていればこの問題は生じなかったはずです。
結果コントロールで仕事を任されたとしても、必ずしも本人の意志でコントロールできない要素があります。例えば、大口案件を任せられているスタッフと新規開拓を任せられるスタッフとでは、売り上げ数字的に新規開拓のスタッフのほうが不利です。このような状況を踏まえずにマネジャーが安直に数字だけでスタッフを評価すれば現場のスタッフには不満が溜まります。
結果コントロールは目標を達成するまでのプロセスを細かく評価しないため、客観的に判断が出来る数値を評価基準になりがちです。しかし、特定の数字だけで判断をしようとすると、どうしても点数稼ぎのための短期的に成果の出る行動に陥りやすくなってしまいます。そのため、中長期的に評価の出る行動に走りやすくなります。
組織は支えているのは数字だけではありません。お客様への接客対応や、技術サポート、社内マニュアルの整備など数字にしづらい要素も組織には欠かせません。このような一見すると地味な活動が正しく評価されないと、だんだん会社の中に不満が溜まっていく危険性があります。
結果コントロールで上司や同僚への依存度が減ってくると、助け合いの精神が減り、個人主義に陥りやすくなります。例えば、成果を出すためのノウハウを自分だけのものにするなどが考えられます。
このようにノウハウが特定の人物だけのものにしてしまうと、その人物の退職と同時にノウハウも会社から無くなってしまう危険性があります。
これまで説明してきた内容を見ると、結果コントロールは諸刃の剣のような印象を受けるかと思います。その印象は間違っておらず、実際には結果コントロールが単体で使われることはありません。行動コントロールや環境コントロールなど、別のコントロールとうまく組み合わせて、結果コントロールのマイナス部分をカバーして行きます。例えば、
といった具合です。
環境コントロールとは、組織の文化を作り出すインフラをコントロールすることです。環境コントロールに最も大きな責任を持つのは必然的に経営者となります。
どんな目標を掲げ、どんな雰囲気の会社にするかは、経営者の志や思想にかかっています。ただし、志が高いからといって、会社がうまくまわるとは限りません。社長が熱く語っても社員は斜に構えて聞いていたり、しらけているのは会社の定番シーンです(苦笑)。
マネジャーは経営者の志を組織内で正しく伝達し、実現していくという重要な任務を背負っています。
創立間もないスタートアップ企業やベンチャー企業は社長が熱いビジョンを掲げています。そして、入社する人たちはそのビジョンに惹かれて集まってくるケースがほとんどです。
組織はこの状態を維持して行かなければなりません。経営者が本気で経営理念を掲げ、さらにマネジャーがそれを実践していけば、それに合わない人たちは、居心地が悪くなり、自然とやめて行きます。そして価値観に共感する人たちだけが組織に残り、洗練されて行くのです。これが組織の本来の姿です。
よく全社会議などで経営理念などをすっ飛ばして売り上げ目標だけ掲げる組織を見かけますが、そのような組織は離職率も高くなります。組織が何を目指しているかを明確にしていないため、スタッフも働く目的を自分自身の利益優先で考えるしかなくなります。
例えば、組織を自分自身のキャリアの踏み台として考えていたり、お金の為だったりです。規律が明確であれば「それはウチらしくない」といった声があがり、スタッフ自身で判断を取ることができるなど、結果コントロールの精度を上げることもできます。
当たり前ですが、組織は人の集まりでできています。従って、組織の価値観とマッチングする適切な人を雇うということは、経営者の最も重要な活動の一つです。誤った人を採用すれば組織に悪影響がありますし、適切な人を雇うことができれば組織力は何倍もアップします。
ビジョナリーカンパニーのジムコリンズは「先に人を選べ」と言っています。スキルや学歴、業務経験ではなく、まずは「基礎的能力と性格」を重視すべきということです。つまり、コミュニケーション能力や思考力、価値観などを変えることはできないため、この部分が一致した人材を確保しなければならないということです。スキルの確認は価値観が一致しているか確認したあとです。
組織のデザインとは、トップから現場までを何階層にするか、誰にどんな権限を与えるのか、どう評価するのかといったことを決めることです。基本的な組織のデザインは組織が達成したい目的によって決まります。重層なピラミッド型か、自立分散型か、運命共同体のグループ単位かなどです。
誰をどのように評価するかは組織のカルチャーに極めて大きな影響を及ぼします。評価制度の基本は以下の通りです。
極めてシンプルですが、経営理念と評価制度にズレを生じさせないことは意外に難しく、以下の2つのポイントは要チェックです。
経営理念と評価が一致しているか
例えば「チャレンジ精神」を経営理念に掲げている会社で新しいプロジェクトの立ち上げに失敗してしまった社員をトップが「今度は利益を10倍にして返してくれよ」と勇気づけ、高く評価すればみんな奮起すると思います。
逆に「顧客満足度」や「チームワーク」が大切と言っている会社が売り上げだけを評価する制度になっていれば「結局売り上げが一番大事なんだよ」と間違ったメッセージが伝わってしまいます。
評価すべきものを測っているか
営業職であれば売り上げで評価ができそうですが、事務職は、数値では評価がしづらいでしょう。また、営業職であったとしても顧客と長期的な関係を築こうと思ったら単なる売上高だけでは評価ができません。また、評価する場合も「どうやって測るのか」は事前にはっきりさせておかないと問題が生じます。
ひとは好きなことをしているときに最も高いパフォーマンスを発揮します。本人に見合う仕事を割り振れば、モチベーションが上がり、高い仕事の成果が出せます。また、チームとして相性が合う人、苦手な部分をお互いにカバーできる人を組み合わせることができればさらに高いパフォーマンスを発揮することができます。マネジャーは各スタッフの能力を的確に見抜いて、適材適所で人材を配置していく必要があります。
日本はOJTが中心で、外資系企業に比べて、正式なトレーニングにかける金額が一桁すくないと言われています。それでも自分自身でトレーニングが必要と気づいた人は自腹でビジネススクールに通ったり、書籍を購入して独学で勉強しています。これらを企業が積極的にサポートしたり評価できれば、高い成果を発揮出来る人材を育成することができます。
例えば、会社で支給されているパソコンが古ければ、高い成果を発揮することはできません。このようなハード面のサポートはもちろん、無駄な会議や社内調整を減らして、営業に集中できるようにするなど、ソフト面のサポートも重要です。このように組織はスタッフが120%の能力を発揮出来る仕事の環境を整備する必要があります。
以上、3つのコントロールをご紹介してきましたが、それぞれプラス面とマイナス面があります。基本なブレンドは以下のようになるのではないでしょうか。
新人時代
行動コントロールを強くして、基本を身に付けさせる。
新人からエースへ
土台には環境コントロールを敷き、そのうえで、結果コントロールを強くし、要所で行動コントロールを混じえる。
この記事がマネジメントに苦戦する経営者や中間管理職の方、チームリーダーのヒントになれば幸いです。
※3つのコントロールは若林計志氏の「MBA流チームが勝手に結果を出す仕組み」で詳しく紹介されています。より詳しく3つのコントロールを学びたい方はご一読を。
この記事の執筆者
椿坂 泰志
1988年生まれ。福井県出身。キオミル株式会社代表取締役。大学卒業後に都内Web制作会社に入社。2018年の退職までに300社以上のWebサイトをディレクション。2018年9月にキオミル株式会社を設立。得意領域はBtoBマーケティング、Webディレクション、プロジェクトマネジメント、法人営業、組織マネジメント。
「小さくても強くて優しい組織」を目指して、苦悩しつつも前向きに会社を経営中。淡水魚とサメと旅行が好き。
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