【キオミル定期勉強会レポート】第2回 AI入門講座
2023.11.30
椿坂 泰志
こんにちは。キオミル株式会社の椿坂です。キオミルでは今期の新たな取り組みとして、毎月、各分野の外部有識者を招いて社内勉強会を開催いただく機会を設けています。
10月の勉強会のレポート記事はこちら
第2回となる11月の勉強会では、AIやDXの教育、コンサルティング事業を展開しているマインドテック株式会社の代表取締役久場様、チーフプロデューサー/ディレクターの上田様、サービスデザイナーの能重様に、AIの入門講座を開催いただきました。
今回の講師
マインドテック株式会社 代表取締役 久場 純哉
2000年早稲⽥⼤学卒業。上場直後のサイバーエージェントでデジタルマーケティング⼦会社⽴ち上げに従事し、執⾏責任者として、約3年半で同社を年商90億に成⻑させる。その後、複数のITベンチャー企業で営業、マーケティング、開発、新規事業の各部⾨を担当する本部⻑・役員等を歴任。 新規事業の企画開発としては、プラットフォーム型のビジネス、ARアプリケーション、BIシステム企画開発等の実績がある。
今回の勉強会はマインドテックの皆様にオフィスにご来社いただいて開催しました。東京サイドメンバーは一部を除いてオフィスに集合し、関西メンバー4人はコワーキングスペースに集合して、ハイブリッド形式での開催となりました。
目次
私たちがただ漠然と「AI」と呼んでいるものには、実は2種類あります。それぞれ「弱いAI」「強いAI」と呼ばれており、強いAIは人間ができることを何でもできるAIを指します。私たちがSF映画でよく目にするような、人間の代わりに考え、動くAIですね。久場さん曰く、学術的には人間の代替になるような「強いAI」の実用化はまだまだ非現実的とのことでした。
一方、弱いAIはタスク特化型のAIを指します。私たちが最近目にするAIは、実はほとんどが弱いAIなのだそうです。
AIが具体的に何をやっているかイメージしづらいかもしれませんが、人間がやっていることと同じことをAIがやっていると捉えればいいとのことでした。具体的には、見る、聞く、話す、感じる、考えるといった、人間がもつ能力と同じことをAIもやっているのです。
ビジネスシーンでは、AIはこれらの能力を活用して仕事を代替、補助するものとして捉えられます。
最近のAIブームは、実は第三次AIブームであり、以前からAIは存在していました。例えば、お掃除ロボットのルンバは推論・探索型のAIです。次に登場したのが、迷惑メールフィルタのようなエキスパートシステム型のAIです。人間が迷惑メールと判定したものをAIが学習して、同様のメールを迷惑メールとして自動で判定するようになります。人間が判断のルールをAIに教えるようなものです。
そして、現在の第三次AIブームにあるのは、「機械学習」や「ディープランニング」というAIです。AIが大量のデータを自分で学習します。例えば、囲碁で人間に勝ったというような話もありました。
先にご紹介いただいた推論・探索型、エキスパートシステム型のAIのほかに、機械学習型のAIがあり
ます。さらに、機械学習型AIは教師あり学習、教師なし学習、強化学習の3つに分かれます。それぞれの概要を要約するとこうなります。
様々な情報に対してタグ付けをしていきます。(アノテーション)
これが教師データになります。
タグ付けや分類されていない情報を、それぞれの特徴などからグループ分けします。
例えば、「どういう仕事が向いているのだろう?」ということも、データがあればできるようになります。性格診断データなどを入れて、今の仕事を登録することで、AIが「デザイナーの人はこの価値観の人が多いな」と分類し、類似するグループを作ることができるとのことです。
シンプルなルールを与えて、後は勝手にAIがその仕組みを強化していくモデルです。
例えば、得点が高ければプラス評価、得点が低ければマイナス評価といったルールを与えれば、あとはAIが勝手に強くなっていきます。
サンプルで見せていただいた動画
例として見せていただいた動画のAIには、「下にボールを落としたらマイナス」「ブロックを消したらプラス」というシンプルな2つのルールを与えているそうです。
AIが学習し、徐々にボールは落ちなくなっていきます。
この後、さらにブレイクスルーが起きます。1回でたくさん消せる法則を勝手に見出して強化していく様子を見ることができました。
このセクションではまず、久場さんから問題が出されました。
この写真の中で犬と猫を当てていくのですが、1匹どちらか分からない写真が紛れ込んでいます。
キオミルのメンバーも一斉に回答しましたが、意見が見事に割れます。
正解は猫でした。
なぜ間違えたのか? そして、なぜ意見が割れたのか?
それは、人間が各自で見て学んできたモデルがそれぞれ違うから意見が割れたのです。
では、人間ですら判断に迷うものを、AIは判断できるのでしょうか?
ディープラーニングも同じで、大量のデータから自ら学習し、曖昧な特徴を理解することで、人間と同じような判断ができるようになります。私たちが生まれてからこれまで色々な犬や猫を見てきた経験則をデータとしてAIに大量に与えれば、間違えなくなるとのことでした。
さらに、ディープラーニングの一例として、久場さんにTeachable Machineというサイトでデモンストレーションを見せていただきました。
https://teachablemachine.withgoogle.com/
さまざまな角度で撮影したグー・チョキ・パーの画像をAIに覚えさせて、識別させるデモンストレーションでした。
グーをグッドポーズにしたり、チョキを三本指にしたり、二本の腕でポージングしたりすると、AIが判断に迷っていることが見て取れます。これは「教師が弱い」ことによるものでした。
次のセクションでは、AIの機能理解について学びました。
デジタル技術は、人間の能力の拡張です。
そして、基本的にすべてAIが指示を出しています。
また、人工知能には大きく3つの機能があります。
1.人間の目や耳のように、画像(動画)や音や言葉を識別すること
2.人間の脳のように数字やニーズ、最適なマッチングを予測すること
3.人間の手足口のように、発言や表現、デザイン、また作業や適切な行動などを実行すること
以下、それぞれ解説していきます。
人や動物、乗り物など物体の形状を学習して認識・判別する技術。
先ほど体験した犬猫の写真を識別するデモも、これに該当します。
この技術は、がんの早期発見や自動運転の環境認識などに活用されています。
⾳の波形データから、話している⾔葉をテキスト化する技術。
私たちがよく知る「Amazon Echo」や「iPhone Siri」にこの技術が活用されていますね。
言葉を理解する技術です。品詞を理解するロジックももっており、たとえば、「すもももももももものうち」という⽂章がどこで区切れてどの単語が使われているかを解析し、「すももも、ももも、もものうち。」と解釈できるとのことです。
(すもももももももものうちって面白いですね。笑)
この技術は、Google翻訳アプリや⼥⼦⾼⽣AI「りんな」で活用されています。
予測するAIはさまざまなツールに実装されています。
例えば、NHKが開発したAI野球解説「ZUNOさん」は、過去のデータからAIがリーグ順位や投球種確率を分析し、人間には見つけることのできなかった選手の傾向を予測します。ほかにも、顧客情報や天気予報、交通情報など、さまざまな膨大なデータをAIで分析し、缶ビールの売上予測をするAIなどもあります。
実行するAIは、今最も旬なAIです。例えば、ロゴデザインを自動生成するloolaや、エリアのゴミ発生量を予測し、ゴミ収集ルートを最適化してゴミ収集車の走行距離を大幅に削減してくれるAIなどもあります。
これは私自身も予想していた通りでしたが、運輸、卸売り・小売り、製造を中心にAI市場は爆発的に成長し、2030年には約86兆円の市場になるとのことでした。例えば、広告業界であればモーション系の広告を時間帯で切り分けたり、製造業界であれば不良品チェックなど品質管理分野にAIを役立てたりすることで市場が伸びると考えられます。
AIをビジネスに活用する切り口として、6つのパターンを教えていただきました。
パターン化して教えていただくことで活用イメージが湧きやすかったです。
データをもとに数字や出来事を予想したり、行動を制御したりするパターンです。天気予報や混雑予想、最適な交通手段の提案、自動運転やゴミ収集の最適化などが該当します。
センサデータから認識や推定をするパターンです。顔認証や指紋認証、異常の検知や状態の推定や変化研修などが代表的なパターンです。
データの中から適切な選定基準や順番を導き出したり、合意形成を支援したりするパターンです。代表的なケースとしては、裁判の膨大な判例から最適な判決を下すなど、人間が利害関係で選ぶより公平性からAIに委ねるといった活用方法が考えられるとのことです。
大量の数値データから分析結果や因果関係を知らせたり、大量の情報のポイントを要約してくれたりするパターンです。議事録の要約ツールなどは、すでに世の中に登場し始めています。
テキストを音声に変換してくれたり、テキストから画像や最適な文章を作ってくれたりするパターンです。例えば、コールセンターの情報からFAQコンテンツを生成することなどが可能です。
スケジュールの提案や最適な配置、パーソナライズなどのケースです。例えば、広告の配信スケジュールや工場の生産配置、ニュース記事の個別最適化などで活用されています。
いくつかの事業パターンについてデモも見せていただきました。
次は、私もずっと気になっていた、AIの向き・不向きについての話をお聞きしました。まずは、AIが向いている3つのケースです。
これまでの講義やデモンストレーションでなんとなく分かりましたが、AIにはデータが必要であり、たくさんのデータがあるケースには向いているといえます。また、データが偏っていてもダメで、基本的にはデータの定義や項目が長期的に変わらない方が向いているといえます。
導入という視点では、利用者にとって価値が高い場面は当然向いています。また、数%の改善が大きな価値に繋がるケースも向いています。例えば、Webサイトでいえば、CV率がわずかコンマ数%改善するだけでも十分な成果といえます。
AIでも100%の正解は難しいため、多少の失敗が許される場面の方が向いています。例えば、最終局面の前工程などにAIを導入し、最終チェックは人間が行うといったケースなどです。
続いて、AIが向かない3つのケースについてもお聞きしました。
AIの出す答えは、基本的に途中工程や決定ロジックが分からないので、なぜこのような判定になったのかを説明しなければならない業務には向いていないとのことです。キオミルでいえば、プレゼン資料にAIで導いた答えを記載したとしても、顧客から「なぜこうなったのですか?」と説明を求められた際、「AIが出したので」と答えるわけにはいかないのは容易に想像できます。
AIはデータに基づいた判断しかできません。そのため、状況が著しく変化する場面ではデータが集まるのが追いつかないため、向いていないといえます。
先の犬猫を判定するデモンストレーションでもありましたが、判断に必要なデータが少ない場合は十分な力を発揮できません。
さらに、私たちのWeb制作業界にもどんどんAIが普及してきているケースをご紹介いただきました。
主にノーコードツールが普及してきており、例えば、PowerPointファイルがWebサイトになるSlideflowというツールなどをご紹介いただきました。ほかにも、figmaがそのままWebサイトになる話やロゴの自動生成など、Web制作業界にも自動化の時代がすぐそこまできていることがヒシヒシと伝わってきました。
画像内のサイト
次のセクションでは少し温度感が変わり、AI倫理についてのお話になりました。
倫理問題を考えるうえで有名な「トロッコ問題」が出題されました。
参加したキオミルメンバーも、みんな難しい顔で考えています。
久場さんが伝えようとされていたのは、「AIをどこまでプログラムに組み込ませるのか?」というお話でした。
自動運転をどこまで自動化するのか?
このトロッコ問題のようなシーンに出くわしたときに、AIがどのように判断するようにプログラムするのか?
非常に考えさせられるお話でした。
久場さん曰く、AIと人間の話は最終的には「倫理・道徳の話」にいきつくとのことでした。
この話は、最近では社会的にも浮き彫りになりつつあり、AIには倫理的な課題が3つあるといいます。
自動運転の責任は誰にあるのでしょうか。運転手でしょうか、それともAI設計者でしょうか? データ提供者、あるいは車メーカーでしょうか?
例えば、人事評価や査定にAIを用いる場合、査定するAIの情報リソースにはバイアスが含まれている可能性があります。
例えば、介護現場を介護ロボットに任せっきりにしていいのでしょうか。人とのコミュニケーションをなくしてしまっても大丈夫なのでしょうか?
ちなみに、日本は世界的にも道徳・倫理の考えは遅れているらしいです。
人間がどれだけ機械的で効率的な新技術を開発しても、最終的には人間的な問題に行きつくのだなと、なんともいえない気持ちになりました。個人的には、このセクションが今回の講義で最も印象的でした。
画像生成AIの著作権や商用利用
倫理の話の延長で、画像生成AIについてもお話しいただきました。画像生成AIで作成した画像の著作権はユーザ側にあり、商用利用が可能なものもあります。しかし、プロンプト次第では既存のデザインや既存の絵柄によく似た「〇〇風」の画像が簡単に作れてしまいます。また、サービス側がトロッコ問題を回避する規約にしているケースもあります。例えば、DALL-E 3では「DALL-E 3で生成したものは自由に使っていいけれど、生成する際には著作権などを考えて使ってください」というニュアンスの記述がコンテンツポリシーに記載されています。
つまり、画像生成AIの生成や使用にあたっては使用者個々の倫理観が問われることを意味します。久場さん曰く、今後、このようなケースは増えてくるだろうと予想しているとのことでした。
最後に質疑応答のお時間を20分ほどいただき、講義は終了しました。
私はこれまでAIに対して漠然とした不安と期待を抱いている状態でしたが、講義を受けてAIに対する解像度が上がりました。同時に、AIを正しく理解する手掛かりを得たような気もしています。
デモなどを拝見して、正解やゴールが明確な業務は今後ますますAIに転換されていくだろうなという印象を受けました。
特に、Web制作会社は以前から「なくなるなくなる」と言われ続けていましたが、今回ばかりはいよいよ現実味を帯びてきた感じがします。
労働力を提供するだけのフリーランス(厳密にはこれは個人・法人・従業員・雇用主問わずですが)は漏れなく淘汰されるでしょうし、キオミルや私もポジショニングを間違えないようにしないといけないと再認識する良いきっかけになりました。
久場様。今回はすばらしいご講義をありがとうございました!
マインドテック株式会社様ではDXやAIの人材育成カリキュラムやコンサルティング、プロジェクト伴走をされています。DXやAIに関する課題を抱えている企業様はぜひ一度相談してみてください!
https://mindtech.co.jp/service/
今回の講師
マインドテック株式会社 代表取締役 久場 純哉
2000年早稲⽥⼤学卒業。上場直後のサイバーエージェントでデジタルマーケティング⼦会社⽴ち上げに従事し、執⾏責任者として、約3年半で同社を年商90億に成⻑させる。その後、複数のITベンチャー企業で営業、マーケティング、開発、新規事業の各部⾨を担当する本部⻑・役員等を歴任。 新規事業の企画開発としては、プラットフォーム型のビジネス、ARアプリケーション、BIシステム企画開発等の実績がある。
この記事の執筆者
椿坂 泰志
1988年生まれ。福井県出身。キオミル株式会社代表取締役。大学卒業後に都内Web制作会社に入社。2018年の退職までに300社以上のWebサイトをディレクション。2018年9月にキオミル株式会社を設立。得意領域はBtoBマーケティング、Webディレクション、プロジェクトマネジメント、法人営業、組織マネジメント。
「小さくても強くて優しい組織」を目指して、苦悩しつつも前向きに会社を経営中。淡水魚とサメと旅行が好き。
この記事の編集者
水島 なぎ
1985年生まれ。福井県出身。「書く・編む・正す ことばのよろず屋」を掲げる、フリーランスのライター・編集者・校正者。実用書系出版社の企画編集者として培った編集スキルやディレクションスキルを生かし、紙媒体やWebなど幅広い分野で活動中。正しい日本語、読みやすい日本語、誤解されにくい日本語への提案が得意。
この記事を気に入りましたら、ぜひ「いいね」「シェア」をお願いします。
キオミル株式会社では個別交流会を実施しています。
キオミルでは将来一緒に働いてくれる仲間やパートナー、同業種の方々と交流したいと考えています。転職先や職職先としてキオミルに興味がある方、同業者やパートナーとしてキオミルに興味のある方。まずは飲み物でも飲みながらゆるやかに交流しませんか?
Web制作に関するお悩みがある方はお気軽にご相談ください。
キオミルブログはキオミル株式会社のスタッフが日々の学びや社内のカルチャーなどを発信するブログです。
キオミル株式会社はビジネス課題を解決できるWeb制作会社です。特に中小中堅企業を中心とした、BtoB企業の新規見込客の獲得や採用強化、業務効率化の支援を得意としています。Web制作やマーケティングに関するお悩みがある方はお気軽にご相談ください。